智恵子抄 (新潮文庫)
「知恵子抄」を一人朗読しながら、涙した、あの若かりし時代は既に30年以上も前のこと。年を経ただけで、この著書に対する姿勢の何が変わっただろうか。社会人として長年勤め、家族をなし、今また定年を目前にして・・・・・。「愛」ほど頻繁に語られるテーマはないと聞く。この著書のような無菌状態の愛は珍しいものだろう。幾分か影があってもおかしくないが、影の部分があったとしても、光太郎によって純化され、美化されたところもあるのではないだろうか。「たかが愛、されど愛」とも思う。愛は美しくあって欲しい。そうした経験ができるなら幸いである。この著書は純粋培養した「愛」の典型、「愛」の理想として素直に受け止めればいいのだろう。ただこの著書のような愛も、現実に多くの人が経験する愛も愛には違いないが・・・・。
話は変わるが、八木重吉という詩人の家族のような哀しい愛もある。目立ちはしないが、美しい。八木重吉の詩との邂逅は知恵子抄を知って凡そ二十年後のことであり、知恵子抄のように読後の衝撃はなかったが、家族愛としては印象深い。さて、私は、知恵子抄の「樹下の二人」が好きである。「あどけない話」にある「ほんとの空」のイメージが重なる。この「ほんとの空」は、詩的に美しい空の概念を見事に打ち出したものとして、出色のものであると思う。「ほんとの空」は美しいが、ものがなしいイメージも付き纏う。ともあれ、老いも若きも、この著書の「愛」に与りたいものである。
幼児性愛―狂気するペドフィル犯罪
幼児を狙った殺人から売春の斡旋、監禁や汚職など
様々な形で幼児性愛という病がからむ十近くの事件の詳細が
載っていて、「幼児性愛の歴史」といった趣になっています。
幼児性愛者の心理などにはあまり触れませんが、
事件を淡々と綴るだけでなく、ひとつひとつの事件に対して
著者の分析や問題点の提示なども含まれているので
幼児性愛という病について真剣に考えながら読み進めることができました。
千年女優 [DVD]
無念ー。あまりに無念。まだまだ若く、これからという人だったのに・・・。
今監督の夭逝は、個人的には失礼は承知の上だが、「ジブリのM監督が・・・」というそれよりも遥かに衝撃が大きい。
日本アニメの将来に与える影響・功績を考えれば、無念の言葉以外に何も思い浮かばない。
もしもまだ千年女優をみていない観客がいるならば、その人は幸せである。映画の楽しみというものを今の時代にこれほど端的に示してくれる映画はない。アニメというジャンルを超え、映画を観る喜びを教えてくれる作品だ。
ひとたび幕を開ければ、たおやかな音楽とともに現実と幻想を行き来つつ、ラストシーンの名セリフまで一気に見終えずにはいられない傑作かつ名作。この映画を観ずに「日本のアニメって、やっぱジブリだよね」と言っているならば不幸極まりない。
ああ、本当に、本当に無念だ。ご本人はもっと無念だったろう。わずか数作の作品監督ではあるが、アニメを問わず、日本映画史に名を残さねばならない人を失った・・・。
これほど悔しいことはない。悲しい。無念だ!!!!!
嘆きの歌/パーセル:歌曲集
パーセルをカークビーが歌う、イギリスイギリスのパーセル。歌詞の繰り返しの多い節を、微妙なニュアンスを変えながら歌っています。「狂気のベス」は、物語を語るように「嘆きの歌」や「ばらの花より」は甘ーく歌いあげています。最後の「夕べの賛歌」は、さすが、王室の礼拝堂オルガニストだったパーセルの名曲。通奏のオルガンが同じ旋律を下降している三拍子が何とも気持ちよい。一日の終わりに夕日を見ながら、何度でもききたくなります。