「権力」に操られる検察 (双葉新書)
郵便不正事件で厚労省元局長の無罪判決が出てまもなく
大阪地検特捜部による証拠改竄が発覚、横暴かつ非法な
検察のやり方に市民の怒りが向けられている現在、
本書は実にタイムリーに日本の腐敗した権力システムの闇を
暴いてくれている。今回の改竄事件の犯人とされる検事も、
改竄の事実を知りながらそれを見逃がした上司も、
数々の疑惑の事件に関わって調書を「作り上げて」来た
のだと知るだけでも、この問題の根深さが窺い知れる。
「捜査はやるか、やられるかだ」
この言葉に象徴されるように、特捜部の検事にとって
高級官僚や有力政治家を起訴し、有罪判決を勝ち取ることは
大きな手柄であり、出世の決め手なのだ。逆に無罪判決が
出ることは検察の敗北であり、担当した検事の責任問題となる。
真実ではなく勝敗を重視するこのようなシステムが検事達の
功名心を煽り、強引な捜査やでっち上げ調書を生んでいる。
もし今回の事件が組織的犯罪でなかったとしても、
構造的犯罪と言ってよいのではないか。
そしてさらに深い問題は政治家との癒着。本書では「けもの道」
というキーワードで語られる。三権分立などは全くの絵空事、
この国の根幹にまで病巣が広がっていることを知り、
怒りを通り越して戦慄を覚える。
このような権力の闇に対して、我々一般市民はどう対峙すれば
よいのか。それはマスコミの報道を鵜呑みにせず、
常に物事の裏に隠されている真実に対する想像力を失わないこと。
そのサンプルケースとして、本書で明らかにされる
5つの事件の深層を知っておくことは無益ではない。
ドキュメント検察官―揺れ動く「正義」 (中公新書)
あれだけ世間を騒がせたのに、刑が軽いんじゃないとか、どうして不起訴になるのとか、感じることがあります。しかし法律に従えば、「仕方がない」という検察官のジレンマがよく伝わってくる本です。
また新聞などに発表される判決文は読む気になれない難解なものですが、裁判員制度に向けて、分かりやすくしようという試行錯誤は、いい方向に向かっているなと感じました。