澤田隆治が選んだ 爆笑!漫才傑作集(5)
このシリーズの中で、珍しい漫才さんが登場しているのがこのCD。相方の玉枝の顔の長いのを売り物にして、ネタのそこかしこに「うま」が出てくる「玉枝・成三郎」のコンビの漫才は、このCDでしか聞くことが出来ない貴重なもの。≪万歳の神様≫とされ業界では「師匠」と呼ばれるのが普通のところ、「砂川捨丸・中村春代」の捨丸だけは、「先生」と呼ばれていた。80歳を過ぎても舞台に上がっていた捨丸の面白さは、聴かないとわからないであろう。はじめて「お笑い金色夜叉」を聞いた時の事は忘れられない。高齢で飄々とした捨丸の顔が全く笑わずに演じる漫才は、その客席とは正反対。客席は爆笑である。「三遊亭小円・木村栄子」、「ミスワカサ・島ひろし」は、大阪漫才の代表的存在。栄子の口の悪さは、有名。ミス・ワカサの早口は、立て板に水どころか立て板に水ならば滲みこむ間があるが、立て板に玉である。どちらも女性が男性をやり込めてしまう漫才。「夢路いとし・喜味こいし」には、説明も不要であろう。
夢路いとし喜味こいし 漫才傑作選 ゆめ、よろこび しゃべくり歳時記 [DVD]
老若男女を問わず愛された名人芸。その暖かくてほのぼのとした「夢路いとし喜味こいし」の話芸を,存分に堪能できる永久保存盤です。
収録されている「お題目」は以下のとおりです。
ジンギスカン料理 /我が家の湾岸戦争 /お笑い交通巡査 /お笑い長電話 /ぽんぽん講談 /女の一生 /
物売り 季節感 /こいしさんこいしさんピアノ /親子丼 どんどろだいし /新婚旅行(旧婚旅行)/全国名物いろいろ /
仲人さん /バック・ライス /花嫁の父 /ファーストフード初体験 /迷い犬探しています /元は役者(女形)/
レストランAランチ・Bランチ /嫁いりまへんか(財産)/機械に弱くてこまります /地球にやさしい男
浮世はいとし人情こいし
いとしこいしの漫才は、やすきよのそれを凌いでいるのは、周知の通りだが、兄弟で絶妙の間。ボケ、ツッコミは勿論、現代日本が誇る最高の漫才コンビである。この本では、彼らの生い立ちからデビュー、伝説の漫才作家である秋田実との出逢いが彼らの漫才を完成していくさまを見事にふたりの絶妙な会話でおもしろ可笑しく書きつづっているのが最高だ。是非ともお笑いに興味のある人は、勿論のことそうでない人にもお勧めしたい一冊である。もうこのような漫才コンビは、出てこないのではないかと思うのは、私だけだろうか。なぜなら、私は今のお笑いは反吐が出るほどつまらないからだ。
お笑いネットワーク発 漫才の殿堂 [DVD]
いとこい師匠は良い悪い、好き嫌いというレベルではないもうその存在だけで十分である。ではなぜ星3つかというとそれはこのDVDの編集内容である。どういう編集基準で集めたのかがよくわからない。ネタとしては同じネタでももっと完成度の高い作品はあると思うような内容である。設定価格は決して安くはない。ただいとこい師匠の映像を必要なだけ寄せ集めただけという邪推をしたくなるような内容である。DVDは元ネタさえあれば簡単に作成・販売できる。だからこそDVD製作者には厳しい目と確固たるポリシーをもって編集して頂きたいと切に願う。
いとしこいし 漫才の世界
普段はあまり言葉に出して語らない感謝の気持ちを抱く対象というのは誰にでもあると思う。ぼくにとって「いとこい」師匠たちへの気持ちも、そんなもののひとつだ。
子供の頃に毎週みていたテレビ番組「がっちり買いまショウ」での名司会ぶりや、NHKなどで放送された漫才の数々は、多くの東京人にとっての、関西弁とのファーストコンタクトだったのではないだろうか。この本は、そんな「いとこい」へのオマージュを集めると同時に、「いとこい」の歩み、名作選で構成されている。雑多な構成というところが、こんご、もしかしたら始まるかもしれない「いとこい」研究の裾野の広さを予感されているかも。
驚いたのは、ご兄弟はお二人とも関東の生まれであること。父親は長野県出身の元警察官で、いとしさんは横浜、こいしさんは川越で生まれている。その後、旅の一座などに加わったりしているうちに、兄弟漫才を結成、様々な紆余曲折はあるものの、売れっ子になっていく。お二人の歩みを読んでいると、決して自分たちが一番になろうとせず、かといって、わき道にもそれない「二番手の王道」を歩んできた良さがあらわれている。それが下ネタなどをやらない、「まるで東宝映画のような、都会的で洗練されたいとこい漫才」(p.45)を生んだのだと思う。
一番、面白かったのは、やはり「名作選」。感心したのが「つかみ」の出だし。どれもこれもスッと入っている。文章を書く上でも、いとこいのお二人のように、スッと入っていかなアカンと改めて教えられた気がする。