ベスト・坂本九・99
個人的に、九ちゃんが亡くなった年齢にそろそろ近づいたこともあり、なかばマイ・ブームのような感じになっていたところへ、CD4枚の総収録時間がなんと5時間もあり、おそらく過去最高のコスト・パフォーマンスを誇る九ちゃんのCDがここに登場した。
くわしい曲目リストはEMIミュージック・ジャパンのHPなどでご確認いただきたいのだが、内容的にもこれは“適当にみつくろって出したもの”などでは決してない。九ちゃんが遺した大量のレコーディングの中から、ヒット曲はもちろんのこと、ディスク2では“ロカビリアン・九ちゃん”の炸裂するロック魂を(しみじみ聴かせるカントリー曲も実にいい)、ディスク3では“みんなの九ちゃん”のファミリアな持ち味を(NHK『新八犬伝』主題歌や、STV『サンデー九』テーマ曲も収録)…、といった具合に、ディスクごとに異なったテーマを打ち出し、ここで初めてリリースされることとなった数多くのライヴ音源と共に、九ちゃんというシンガー、そして人物の魅力が立体的に伝わるしくみになっている。
「おとなの童話」の冒頭2秒ほどが欠けていたり、「21世紀の歌」のエンディング部分が強引な感じでカットされていたり、ステレオ録音である「結構だね音頭」がモノラルで収められていたり、といった事柄や、鈴木啓之氏による解説は、もっと詳細なものが読みたかった、ということもあり、☆は1つ減らしたが、内容的には☆5つに値するものとして大いにおすすめする次第である。
なお、従来のジャケットとは明らかに違い、躍動感のあるジャケット写真は、おそらく1972年のシングル「クラップ・ユア・ハンド」と同じ時のもの。CD4枚はマルチケースに収納され、外付けのブックレットと共にアウターケースに収められている。
また、これまでに発売されたディスクの詳細については、九ちゃんの公式サイトなどをご参照いただきたい。
日本のうた/日比野景~明治から平成まで
~麗しい声に魅了された。日本語の発音、いや日比野ほど言葉を美しく歌う日本の歌手は珍しい。声域も声量もムラがない。弱音がさらに美しく感じる。ソプラノというと壊れた自転車のブレーキのような声を上げる人が多いのだが、日比野は全くその心配がない。CDとして苦言を呈するとすれば録音に方向性が薄いことか。とはいえ久々に大きな期待のできるソプラノだ。~~選曲も個人的に泣ける。~