夏の栞―中野重治をおくる (新潮文庫)
ちょっと高価な講談社の文芸文庫でも、あえて手を出したくなる装丁に拍手!
さて、いわゆるプロレタリア文学の分野に、特に固執しているわけではなく、又、精通していないのですが、佐多稲子さんだけは、何となく文体や描写力が実に魅力的でとても好きです。
その作品の中で異色と言える「夏の栞」は、彼女が尊敬してやまない、中野重治さんが亡くなったその夏のいきさつを見事に描写し、かつ走馬灯のような思い出の数々を印象的に書き綴って、読む者の感動を誘います。とてもすぐれた作品です。