ベストセレクション 「あずさ2号」から最新曲「磐越西線」まで全12曲
本作品,全9曲と曲数は少なめだが,狩人の神髄を味わうには必要充分な曲目が揃っていると言える.
収録曲リリース後のセールスの伸び悩みとともに,彼らは多彩な音楽性への挑戦を試みる.収録曲に代表されるような,「狩人らしい」曲調に彼らも疑問を抱いていたようだ.
音楽としての幅を徐々に広げていったこれ以降の曲目も一聴の価値はあるが,国民的愛唱歌と言っても過言ではない「あずさ2号」をはじめとした,熱く重厚な曲の数々が本作品では楽しめる.中でも「みちのく夏愁」,「国道ささめ雪」,「悲しみ・クライマックス」は出色の出来だ.
狩人の楽曲の特長は,なんといってもドラマ性の高い曲構成にある.マイナー調のイントロから始まり,情感を抑えたAメロからサビのクライマックスに駆け上がる曲展開,更にサビのピークを何枚も畳み掛け,頂点に達して一気に落とすという手法を用いて聴き手の心を揺さぶる.
むろん,兄弟ならではの美しいハーモニーや,「静」から「動」への展開を加速させるバンド・アンサンブルとストリング・ワーク,叙情性の高い歌詞の世界がそれらを彩っていることに疑問の余地はない.
演歌でもポップスでもない,70年代後半という時代が生んだ唯一無二の狩人サウンドへの扉に本作品がなることを願ってやまない.
ベスト・セレクション
「8時ちょうどのあずさ2号」のイメージが強い狩人のお二人ですが、このCDを聞いたならば、ひょっとするとそのイメージが大きく変わるかもしれません。
その内容は、往年の名曲(ニュー・ヴァージョンを含む)と新曲ということになりますが、私が特にお勧めしたいのが、「あずさ2号(ニュー・ヴァージョン)」と「夢よひらけ」です。
前者は言うまでもなく、狩人の代名詞とでもいうべき名曲をリメイクしたものですが、狩人のデビュー曲となった、若さの見え隠れする別れの歌という感じのするオリジナルのものに比べ、いろいろと年輪を重ねてきた二人の味がいい意味でにじみ出て落ち着きのある、大人の別れの歌とでも言うべき歌です。これもまた名曲と申せましょう。
もう一方の「夢よひらけ」。この??の作詞者・加藤文子氏は狩人のお二人の御母堂。作曲者の加藤久仁彦氏は、言うまでもなく、狩人のお兄さんです。
曲の内容は、狩人のお二人が、故郷の愛知県から上京し、歌手・「狩人」として、成功するまでを文子氏の視点から歌ったものですが、歌手を目指す二人の愛息のことを「夢よひらけ」と見守り続ける、母の思いに、胸を打たれるものがあります。
今、このCDは、生産中止となっているようですが、もし機会があれば、一度お聞きになることをお勧めします。
聞けば、狩人に対するイメージが「8時ちょうどのあずさ2号」プラスアルファになるはずです。