MY HOME TOWN
作品は少し懐かしいくらいのアダルト・コンテンポラリーなサウンドで、スムースに流れてゆきます。案外、今日流行のアンビエントな音楽ニーズにもぴったりなテイストです。夏が涼しく感じる4「渚ふたりで」や、スイートソウルのようなコーラスが品の良い9「レット・ミー・ホールド・ユー・ベイビー」など、透明感に溢れた楽曲が随所に柔らかな風を吹かせます。また2「またたく星に願いを」6「だからブルーにならないで」などもあり、ソフトながらポップレベルの高いアルバムですね。鈴木雅之・佐藤竹善の波長と小田氏とのシンクロ性の高さも改めて絶品です。
そして求心性を放つ5「風の坂道」が何と言っても聴き所。この曲が作品のど真ん中にあるから、不思議と各曲のことばの背景に深みが与えられてゆくようでした。そして聴いている私の生きる一瞬をも切り取るように、鋭くもしなやかに主題が迫ってくると、ポップな作品テイストの中でもハッとさせられ、何かスパイスのような存在です。
でも、その生き方のシリアスさは温かみへ姿を変え、10「MY HOME TOWN」という受け皿で実を結びます。只の懐かしさだけじゃなく、自らのアイデンティティや生きる方向性も醸しだすうたですね。その曲想から、海の光がきらきらと乱反射する輝きがみえるようでした。
他に7「今はきかない」のブルーは小田氏のクリアな声だから、想いが行間に溶け込んでゆくようです。8「それとも二人」との繋がりも綺麗。
齢を重ねた今日聴くと、今作全体から感じる淡い色彩がとても心地よく、ひとつひとつの曲の味がなんだかじんわりと染みます。今作を手にした若い頃は、5のような曲を他にも期待する短絡さが、作品全体のよさを見えづらくしてしまいました。私がまた年をとれば更に色を変えて映る作品なのかもしれません。ゆっくり流れてゆく曲たち、そして最後に10がおかれると、なんとなく海へ向う電車の車窓からみる風景のようでした。
そのままのきみがすき
人に愛されるために、才能や能力がいると思い込んでいた女の子が「そのままの君が好きだよ」と言われ、自分を取り戻していく物語。
この絵本を読んだ読者は、きっと、自分の存在は何もできなくったって尊いのだ、という思いが心を満たし、とても優しい気持ちになれると思います。
いつもそばにおいておきたい、私の宝物になりました。