眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く
本書は、如何にして眼が誕生したのかを述べた書ではない。
眼の誕生が生物界に如何に衝撃的な事実であったのかを述べた書である。
プレカンブリアとポストカンブリアを比べたときに何が一番違うのか
という問いに対して著者が考え抜いてだした結論が眼の誕生なのである。
その結論に至るまでの過程を丹念に追った本書は、新しい推論を
得るまでの知的興奮を素人にも十分に味あわせてくれる。
しかし驚くべきは、眼の起源がひとつではなく、各動物門ごとに
独立に発生したという事実である。
あの精巧な機関は、生物進化上何回も発生しているらしいのだ。
イカの眼と魚の眼は全く独立に発生したというのだ。
全くもって生物の不思議である。
しかし、最後まで気になったのは、これほど精巧な眼から得られる情報を
処理する神経系が、同時に如何にして発生したのか。
脳科学とも絡むここらあたりの次なる展開に期待したい。