氷の接吻 [DVD]
行く先々で罪を犯す恐ろしい美女と彼女を追う男。女は父の面影を求めてさまよい、男は幼い娘の幻につきまとわれながら、ひたすら女の背中を追う。覗かれる女と覗く男の物語がいつしか父と娘の物語へと変わっていく過程が美しい映像と共に心に浸みる。謎めいた哀しみが胸から離れない、とても印象的な作品!
サーモンベリーズ [DVD]
これはパーシー・アドロンという監督の特性なのかもしれないが、ごく普通のひとの、ありふれた人生について、ごく自然に切り取って見せることを身上としているようにみえる。
声高に語ろうともしていないし、なにかドラマチックな効果を見せつけようとも思っていない。無理にまとめてメッセージを伝えようともしない。混乱した人生と、生きることの悲しさや痛みを、混乱した状態のまま見せようとしているようにみえる。
だから映画は淡々としているし、ある意味禁欲的だ。主人公をつとめる二人の人物も、もうすこしひと目を惹くような綺麗なひとを使えばいいのにと思うのだが、やはり役柄に適切な人物であることだけを優先しているようだ。
見終わったあと、ひとはすこし混乱するかもしれない。けっきょく何が言いたかったの? 何を見せたかったの? わかりやすいメッセージはそこにはない。
それに、淡々としすぎていて、まったく印象が薄いことにも面食らうかもしれない。
しかし、おそらくこの監督は、映像の力を信じているのだろう。映そうと思ったものに、適切にカメラを向けること。そんなドキュメンタリーのやり方を、信じている。そこにある美、そこにある真実。そういうものを観てみたいと思うひとにとっては、値打ちのある作品だと思う。
Wonderful World
若々しい円熟、といえば少しはうまく表現できたことになるだろうか。
音楽を言葉で表現することの難しさはいまさら言うまでもないが、伸びやかさという意味でのフレッシュさを今も失わない円熟のベネットはやはり素晴らしい。
ラングのしっとりしながらも張りのある歌声もベネットのそれと相俟ってこのディスクのそれぞれのナンバーの魅力を際立たせている。
こうしたデュエットを聴けることは幸運である。
Hymns of the 49th Parallel
カナダのレズビアンの女性シンガーが自身の愛するカナダのミュージシャンの名曲をカバーしたアルバム。とにかくこの人、声質が本当にすばらしく官能的で、歌も抜群にうまいときてる。なので歌を歌うだけで唯一無二の世界ができちゃうんだけど、このアルバムはどの曲もしっかり原曲をリスペクトしつつk.d. lang以外なにものでもない、という風に自己解釈してて素晴らしい。ニールヤングやジョニミッチェルやロンセクスミスやレナードコーエンは俺も大好きなミュージシャンなので、ラングの色気溢れる声で彼らの名曲を聞けるのはほんとに嬉しい。すばらしい仕上がり。